芦原すなお『青春デンデケデケデケ』

僕の部屋には、飾ってあるCDが1枚ある。

CDショップに売ってるような有名アーティストのものではない。

数年前に静岡のちいさなライブハウスで手売りしていた、インディーズ…というか素人バンドのCD。

かっこよくキメたジャケットには、すこしビジュアル系チックな4人の若者。

収録されているのはたった1曲。

将来への不安を感じながらも、希望を胸に…誰にも届くような、最大公約数的な歌詞。

メロディに対して、歌は少し早すぎる。


しかし僕の胸にはとてもよく染みる




中学2年生の頃だったか。急にクラスの友人とバンドを結成することになった。

とりあえずの目的は、当時流行っていた「オレンジレンジ」のコピーをすること。

メンバーはギター、ベース、ドラムが各1人ずつ。3ピースバンドって言うのかな?

僕は(なぜか)ベースを担当することに。

楽器を手に入れるために、バイトをしてお金を…なんてドラマ的なものはなかったけど、お小遣いとかお年玉とかを貯めて、1万円くらいのベースとアンプのセットを買ったなぁ。

(中学生だし、バイトって選択肢は無いか)

同学年のなかで初めて結成されたバンドということで、クラスでもチヤホヤされて。

いっちょまえにバンド名なんかもつけて、毎日飽きずに楽器のことを話し合っていたなぁ…

ベースが弾けるようになってきたらギターにも手を出してみたり…まぁ「男の子」のベタを楽しんでいた感じですかね。


そのバンドは中学卒業を機に解散してしまったけど、青春の1ページのうちでも鮮明なものです。

幸か不幸か、僕がベース(とギター)を弾くことができるという情報が高校入学後学年に広まり、「女5人、男1人」という異様なバンドを組むことに…というお話は、機会があればまた。



*     *     *



中学の頃にバンドを組んでいたうちのひとり、ドラムを担当していた友人は、いまは地元にいない。

プロデビューを目指して、上京しているのだ。

中学生の頃、ニコニコしながらオレンジレンジを演奏していた坊主頭の少年。

それがいまは、バンドの仲間とオリジナル曲を作り、ライブハウスで演奏しているらしい。

もちろん髪は伸ばし、かっこよくなっている。



部屋にあるCDを眺めながら、かつてのバンド仲間を思い出す。

彼のライブ、また行きたいなぁ。



*     *     *



芦原すなお『青春デンデケデケデケ』という小説がある。

九州の片田舎に住む坊主頭の主人公が、ラジオから流れてきたベンチャーズの「パイプライン」の音に衝撃を受け、同級生を誘いロックバンドを結成する。

恋に友情に音楽にユーモアに…青春がぎっしりと詰まった、懐かしくてたのしい直木賞受賞作品です。

この作品は音楽が多いため、映画版を観るのもおすすめですね。

かっこよくて懐かしい音楽の数々に、映像ならではのユーモア。

じつはこの文章も、この映画版を観ながら書いています。


ではでは、あでゅ!

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